動物看護師が教える!老犬に負担をかけない体のお手入れ方法

愛犬のお手入れはしっかり行っている飼い主さんでも、老犬になって体の変化が起きると、「これまでのお手入れ方法で良いのかな?」「他にしてあげた方が良いことはあるのかな?」と思うことも多いですよね。そこで今回は、老犬期にぜひしてあげたいお手入れや、行う時の注意点についてご紹介します。
老犬になったらお手入れ方法にも配慮が必要!
愛犬が健康に、快適に暮らせるようにと、日々のお手入れを心がけているという飼い主さんも多いですよね。
犬種や1頭1頭の体質によって重視すべきお手入れポイントは異なり、試行錯誤しながら家庭ごとに行いやすい方法でケアをしていくものですが、年齢を重ねて老化のサインが見られるようになった時も、お手入れの仕方を見直す絶好のタイミングです。
なぜなら、
・これまでのお手入れ方法だけでは行き届かない部分が現れる
・体の老化症状によってこれまでのお手入れ方法ではうまくいかなくなる
といったことがよく起こるからです。
時には、若い頃と同じお手入れ方法を続けてしまうことによって、愛犬のケガや過度な疲労につながり、一時的な体調不良や持病の悪化につながりかねないケースもあります。
老犬になってからも適切なお手入れを続けてあげるために、老化に合わせて何をすべきなのか、どんなことに注意した方が良いのかを知ってみましょう!
自宅で老犬にお手入れをする時のポイント
目やに・涙やけ
犬の老化に伴い、体からの分泌物は増える傾向にあります。
目やにや涙はもちろんのこと、感染症にかかりやすくなったり、歯周病の進行で上顎の骨が溶けて鼻に穴が開いてしまうことで、くしゃみや鼻水症状が増える可能性もあるでしょう。
目やにや鼻水がこびりついたままになってしまうと、皮膚が荒れたり、嫌なニオイの原因になることも多いので、見つけたらこまめに拭き取ってあげることが大切です。
ただし、乾いた素材のコットンやガーゼでこびりついた状態の汚れを取ろうとすると犬に痛みを与えてしまったり、皮膚を傷つけてしまうので、必ずぬるま湯で湿らせたものでふやかしてから取ってあげましょう。
仕上げには水分をよく拭き取って、湿った状態が継続して細菌にとって格好の繁殖場所にならないよう注意する必要があります。
また、老犬になると、鼻先が乾いてひび割れてしまうこともあるので、酷くなるようなら動物病院で保湿クリームを処方してもらったり、ワセリンを塗るといったケアを追加することをおすすめします。
歯磨き
「もう老犬だから口のケアは諦めている…」という飼い主さんも少なくありませんが、成犬期以降でも歯磨きに慣れる練習を行うことはできます。
もちろんこれまでの生活習慣を変えるわけなので、子犬の頃に比べれば慣れるまでに時間が必要となることは否定できませんが、
・全身麻酔下での歯石除去処置が必要となる間隔を延ばすことができる
・口臭が低減できる
・歯周病の進行を緩やかにし、歯を失わずにいられる
・口の中の異常にも早く気づくきっかけになる
・口周りに触れなければいけない診察によるストレスが少なくできる
といったメリットが生まれるので、ぜひ老犬になってからでも始めてみましょう。
歯磨き練習を行う時には、いきなり口の中の歯を触ろうとしたり、歯ブラシを使おうとするのではなく、まずは「口周りを触られること=良いことが起こる」と犬に認識してもらうことが大切です。
【歯磨き練習のステップ】
1.飼い主さんがおやつを片手で持ち、犬が食べようとしている間に一瞬口元をタッチしてから手に持ったおやつを与える
2.口元にタッチする秒数を長くしていく
※秒数が長くなるにつれ、口元をなでるような触り方へ少しずつ変えていくのがおすすめ
3.犬がおやつを食べている間に唇をめくって歯にタッチ(最初は1本だけ)
4.徐々に触る歯の本数を増やしていく(前歯から奥歯にかけて)
5.飼い主さんの指に犬用歯磨きシートを巻き、歯を1本磨く
6.磨く本数を増やしていく
※すぐに歯ブラシを使わずに、犬が違和感を感じにくい指を使って歯を磨かれることに慣れてもらいましょう
7.指歯磨きは継続しつつ、歯ブラシで口元をタッチ
8.歯ブラシで歯を1本磨き、よく褒めてごほうび
9.歯ブラシで磨く本数を増やしていく
活用するのは自宅にあるおやつで良いのですが、できればここぞという時にしかあげない「とっておき」のおやつで歯磨きへの印象をグッと良くすることをおすすめします。
また、おやつでなくても、犬用のおいしい歯磨きペーストで気に入ってくれるものがあれば、最初のステップから飼い主さんの指に出したものをぺろぺろとなめてくれる間に口元を触る練習をするのも良いでしょう。
動物病院で取り扱っている歯磨きペーストでは、歯垢を分解する成分や口臭を抑える成分が入ったものもあるので、歯磨き練習を始める時には相談してみてください。
爪切り・足裏バリカン
体の老化現象の1つとして、犬ではお尻や後ろ足周りの筋肉量が徐々に落ち始めていきます。
すると、これまでは何ともなかった床でツルッと滑ってしまうなど、足の踏ん張りが効かなくなってしまうことも少なくありません。
踏ん張りが効かなくなって転ぶと体を強く打ちつけてしまったり、関節に負担がかかって脱臼や靭帯の断裂、関節炎の悪化につながる恐れもあるので、できるだけ老犬の足元はスッキリさせておくことを重視しましょう。
大切なのは、「爪切り」と肉球を覆う毛を刈る「足裏バリカン」です。
犬の爪は、体重が比較的ある中型犬や大型犬では散歩によって地面で自然と削れることもありますが、体重が軽い小型犬ではなかなか削れません。
また、元から関節に異常があったり、爪が伸びることで足の着き方に癖が出てくると、一部分だけ削れずに伸び続けてしまうこともよくあります。
犬が室内を歩いている時にカチャカチャと音が鳴るようになったら、爪の切り時だと思ってください。
「出血したら怖い…」と爪切りに不安を感じる飼い主さんは、
・健康診断や検診のついでに動物病院で依頼する
・爪切りだけ行ってもらえるかトリミングサロンに聞く
・爪切りでカットするのではなく、爪やすりで少しずつ整える
といった方法を取ると良いでしょう。
プロであれば、よほど形が異常だったり、巻き爪になっていない限り爪切りはすぐに終わるので、老犬も行動を制限される時間が短くなり、精神的・身体的な負担が減ります。
寝たきりの犬では歩く機会がなくなって爪がどんどん伸びてしまうので、1日1〜2本ずつなど、爪やすりで削る時間を介護の合間に行うことができれば、切りすぎて出血する心配もなく安心です。
足裏のはみ出ている毛も、ペット用の小型バリカンを肉球に並行にして当てるようにすると、傷つけることなくきれいに整えられます。
ただ、こちらもバリカンの扱いに不安があれば、トリマーや動物病院スタッフに依頼したり、
・家族の誰かに老犬を抱っこしてもらい、2人体制で行う
・バリカンは使わずに、ハサミで肉球にかかる毛を少しずつ切る
といった方法をとって、犬の安全に注意しながらお手入れすることをおすすめします。
体の清拭
老犬になって歯周病の影響で歯が抜け落ちたり、舌の動きが衰えてごはんが上手に食べられなくなると、口の周りが食事やよだれによって汚れやすくなります。
また、排泄姿勢を保てないために、トイレをした時に尿が体にかかったり、足を持ち上げて避けることが下手になって、踏んづけてしまうこともあるかもしれません。
すると、体力や筋力の低下から、外で思いっきり遊ぶ時間よりも室内でのんびり過ごす時間が増え、砂ぼこりなどの汚れはさほど気にならなくなる一方で、こういった汚れによるニオイが気になるようになっていきます。
「老犬になってからトリミング後に疲れやすくなったみたい」と飼い主さんが感じることも多くなるので、全身シャンプーをする機会が減ってしまうことも原因としてあるでしょう。
そのため、シャンプーの間隔がある程度空いてしまってもニオイが軽減されるよう、毎日体を蒸しタオルなどで拭いてあげるお手入れが大切になります。
口元は特に濡れたままだとニオイが出やすくなるので、蒸しタオルで拭いた後はもう一度乾いたタオルや使い捨てできるガーゼやティッシュで拭いて、よく乾かすようにしましょう。
ブラッシング
老犬のブラッシングでは、
・老化によって皮膚の水分保持能力が低くなり、ハリがなくなること(皮膚が薄くなる)
・毛量が減少してブラシの先端が皮膚に当たりやすくなること
を意識しておきましょう。
ブラシを強く当てたり、もつれを力任せにほどこうとすると、若い犬以上に皮膚が傷つきやすくなっているためケガにつながる恐れがあります。
ブラシは優しく握って力は込めないようにし、ブラシの先端が皮膚に強く当たらないようにしながら毛をかき分けて、根元から少しずつブラッシングしてあげましょう。
ブラッシングを行うことで、死毛(抜け毛)の除去による通気性アップや、毛の表面についたゴミの除去ができます。
食後に口元が汚れた時や目元に目やにが付着した時には蒸しタオルで拭くほかに、コームと呼ばれる櫛型のブラシで毛にくっついた付着物を取ってから拭いてあげるとさらにキレイになるでしょう。
また、ブラッシングは老犬とのスキンシップにもなって、脳に刺激を与えて認知機能の低下を防ぐ良い時間にもなります。
シャンプー(トリミング)
老犬期のシャンプーは、
・足の筋力低下があると長時間立っているのが辛い
・シャンプーから乾燥までが長時間に及ぶと体力が奪われてしまう
といった問題から、体は食事や排泄物などで汚れやすくなる一方で、シャンプーをすることをためらわなければいけなくなることも多いはずです。
特に寝たきりの犬では自分で立つことができないため、浴室で洗うのも一苦労だと思う飼い主さんもいるのではないでしょうか?
老犬のシャンプーを自宅で行う時には、
・時間短縮のため、シャンプーに必要なものは先にすべてそろえておく
・すぐに温かいお湯が出るよう給湯器とシャワーを稼働させておく
・浴室はあらかじめ温めたり、涼しくして体への負担を減らす
・タオルドライをしっかり行って、乾かす時間を短縮する
・ドライヤーは風量が良い犬のトリミングドライヤーを選んで購入する
といった基本を守ることはもちろんですが、疲れやすくなっているようなら、「カットもしたい!」と思っても2~3日空けて分割して行ってあげるのも良いですね。
本来はシャンプー直後の方が被毛を整えやすく、カットもしやすいかもしれませんが、老犬の体調を優先することも大切です。
持病があって体調の急変が不安な場合や、一般的なトリミングサロンで高齢(特にハイシニア)であることを理由に断られてしまう場合は、動物病院付属のトリミングサロンであれば対応できるケースも多いので、近隣にあれば相談してみることをおすすめします。
汚れやすいため、こまめに清潔を保ちたい寝たきりの犬では、全身洗いではなく「部分洗い」を中心に行って体への負担を減らしていきましょう。
例えば、浴室に少しななめになるようにすのこを敷いて、高さがある部分に老犬の頭がくるようにして寝かせると、排泄物で汚れたお尻周りだけを洗いやすいです。
また、室内の床にペットシーツを敷いた上で、スポンジにぬるま湯を含ませたもので汚れを落としたい部分だけを洗うと、水分はペットシーツに吸収され、体が濡れる部分も一部分で済むので乾かすのも簡単になります。
さらには、100均のドレッシングボトルにぬるま湯を入れて、簡易シャワーにするのも部分洗いにはおすすめです。
最近は、寝たきりの老犬に使いやすい水とは異なる作りの洗浄液も動物病院で販売されているので、取り扱いがあるか聞いてみるのも良いですね。
洗浄液を使うことで、水だけでは落ちにくい排泄物の汚れやニオイがすっきりとして、飼い主さんの介護の負担が減るメリットもあります。
老犬のお手入れはかわいさ以上に清潔さを重視しよう
若い頃はさまざまなカットスタイルを楽しむなど、見た目のかわいさを重視したお手入れもできますが、老犬になって身体機能が低下したり、持病によって負担がかけられないとなると、衛生面を優先したお手入れに切り替えていく必要があります。
排泄物や食事、よだれや目やになどで汚れやすいとなれば、
・お尻(肛門周りや尻尾の内側)
・陰部周辺
・口元
・目元
などは短めにカットすると、日頃のお手入れがしやすくなってシャンプーが必要となる間隔が延びたり、お手入れにかかる時間が短くなるはずです。
お手入れをされる老犬にとっても、短時間で済むケアの方が体力が消耗せず、ストレスも少なくなるため、メリットは大きいものとなるでしょう。
まとめ
老犬のお手入れは、今まで以上に気を遣う部分や、毎日こまめに行ってあげる必要が出てくるものもあるなど、大変な部分もあるでしょう。
しかし、愛犬がキレイな状態でいるということは、それだけで病気を発症させない・悪化させないための第1歩が踏み出せているということです。
老犬になってもまだまだ長生きし、なおかつ毎日快適に過ごしてくれるよう、自宅でできるお手入れはしっかりと取り入れてあげましょう。