【ドッグトレーナー監修】犬と旅行!覚えて安心『旅のお役立ちしつけ10選』

 

普段の生活を離れ、澄んだ高原や、きらめく湖畔へ愛犬と一緒にトリップ。

そんな休日の過ごし方を計画している方も多いのではないでしょうか。愛犬との旅に準備は必須です。

それは持ち物だけではなく、必要なしつけを教えることも含まれます。

今回は、旅先で困らないための、旅行に役立つしつけをご紹介します。

持っていくと便利な持ち物チェックリスト付きですので、合わせてお読みいただければ幸いです。

それでは、さっそく行ってみましょう。

 

 

■1. 犬連れ旅行はイメージから

SNSや動画サイトには、愛犬との旅の様子があふれていますね。

それを視聴しながら、「こんなところで思いっきり走らせてあげたいな」、「一緒に体験できるアクティビティに参加したいね」など思われる方は多いでしょう。

旅の計画は、イメージを持つことからスタートします。

それが決まれば、目的地への移動手段は電車か、車か。

休憩所は犬も入れる場所か。宿泊先はケージか、フリーでもOKなのか。

こういった部分を考えながら、どんどん旅のリアルな計画をイメージして組み立てていきます。

 

■2. 旅行先で困ったこと ≪調査結果≫

犬連れ旅行では、思わぬことが発生するものです。当日になって慌てないためにも、まずは体験者の声を聴いてみましょう。筆者が自身で行った独自の調査では、以下のような例が挙げられました。

 

・新幹線で隣の席の人に吠えて困った

・初めての長距離ドライブで吐いてしまった

・宿泊先のケージに入れると「出して」と吠えてかわいそうだった

・パーキングエリアで車から犬を下すとき、興奮して飛び降りてケガをした

・ドッグランで居合わせた子供を咬んでしまった

・ドッグカフェで飼い主の食べ物を食べてしまった

・ホテルから脱走して迷子になった

・偶然、花火大会があって、その音に怖がって震えていた

 

■3. 旅のお役立ちしつけ10選

上記のような旅先での困ったエピソードは、実は多くの方が経験しています。

現地で困らないように、しつけでカバーできるところは、前もって準備と対策をしたいですね。

では、具体的にはどんなしつけが効果的なのでしょうか。

ここからは、旅行に備えて覚えさせたいしつけを10選、ご紹介します。

 

  1. 1、様々なタイプの人に合わせ、怖がらないように慣らす
  2.  
  3. 2、エレベーターや電車などで興奮しないようにさせる
  4.  
  5. 3、花火やバイクなどの大きな音に慣らす
  6.  
  7. 4、クレート、キャリーバッグ、ケージに入る練習をする
  8.  
  9. 5、ドッグカフェなどを積極的を利用し、マナーを教える
  10.  
  11. 6、「おいで」(呼び戻し)の練習をする
  12.  
  13. 7、色々なシチュエーションで「まて」の練習をする
  14.  
  15. 8、リードをグイグイと引っ張らないように、ついて歩く練習をする
  16.  
  17. 9、吠えないようにトレーニングをする
  18.  
  19. 10、犬用マナーオムツを無理なく履けるようにする

 

■4. 完璧でなくてもいい

いかがでしょうか。意外にやることはたくさんあるなあ、と、ちょっと大変に感じた方もいらっしゃるかもしれません。

でも、どれも100点満点に完璧にできる必要はありません。

その子、その子によって、これは得意だけど、こっちは苦手かも。

ということがあって当たり前なのですから、苦手なところを少しずつ慣らしていきましょう。

そうした練習をしてから旅行に行くと、旅行先での満足感がグっと上がり、愛犬との楽しい思い出が増えますよ。

まずは、自身の犬について、どれが得意で、どれが不得意かをじっくり向き合う作業に取り組んでみましょう。

今までなんとなくしつけてきたことを、客観的に別の視点から見ると、今までは見えなかった得意と不得意が見えてくるかもしれません。

 

 

■5. 旅のしつけを詳しく解説

犬の性格は実に色んな幅があります。同じ犬種でも性格に違いがあるのは、みなさまご存じのとおりですね。

繊細、威嚇しがち、怖がり、好奇心旺盛、興奮しやすい、パニックを起こしやすい、などなど。それらがストレスとなり旅行を楽しめないのは寂しいですから、日常の中で工夫をし、少しずつ慣らしていきましょう。

ここからは、日常でどんなことを取り入れていくと良いのかを、具体的に見ていきます。

 

5-1犬の社会化

まず取り組みたいのが、犬の社会化トレーニングです。

俗に社会化期と呼ばれる時期は、小型犬では生後6か月ごろまで、大型犬では生後1年くらいの間と言われています。

でも、その時期を過ぎてしまったとしても、遅すぎたからもう無理だ、ということはありません。

どんどん新しいものに触れさせ、その子の世界を広げていくのが大事です。

例えば、いつもの散歩コースにちょっとだけ変化を取り入れ、普段は通らない商店街を通ってみるとか、電車を見せに連れて行く、あえて幼稚園のにぎやかな時間帯に園の横を通る、車の往来の多い場所に行ってみるなどは、小さいけれども大きな効果をもたらすチャレンジと言えます。

特別なトレーニングではなく、心を丈夫に育む社会化をしていくことで、お互いが無理なく前に進むことができます。

 

〇5-2クレートトレーニング

クレートとは、犬を移動させるための取っ手の付いた扉つきケースのことです。

前部から犬を出し入れできるもの従来のものに加え、上部からも犬を出し入れできるものや、折りたためるものもあります。

一般的にクレートというと、ポリプロピレン、ABS樹脂、ポリカーボネートに代表されるようなハード素材でできたケースが代表的ですが、最近では、軽く柔らかい布素材でできたソフトなクレートもあります。

女性でも持ち運びがしやすいので便利ですね。夏は通気性の良いものが好まれるので、季節ごとのクレートを持っているという方もいます。

ハウス、電車やバス、新幹線、飛行機などの公共機関を使って移動する場合は、このクレート、または上部カバー付きのドッグカート(乳母車のようなもの)、犬の頭までスッポリ覆うことのできるキャリーバッグ(スリング)に入れる必要があります。

いずれも犬の頭部が外に露出しないことを求められますが、犬が酸欠にならないよう、通気性には配慮しましょう。

ペットOKのホテルや商業施設でも、スペースによってはこうしたものに入れて移動をしてください、という指示がある場所もあります。

普段からクレートなどで過ごす機会を作り、移動の際にも落ち着いていられるように練習をしておきましょう。

 

〇5-3 ムダ吠えを減らす

「ムダ吠えがひどくて」という犬を、しつけで直そう、直そうと焦るあまり、こじらせている方は多いものです。犬はしゃべれませんから、基本的には興奮が高まれば吠える生きものです。

犬の吠え声をいけないものだと決めつける前に、私たち飼い主は今一度その性質について理解をする必要があります。

しかし、過度な吠え声が続けば、社会の中で周りからもあまり歓迎されないのは実際のところですから、ある程度で吠えるのをやめることや、興奮させないようなしつけを行うことはマストです。

 

普段はおとなしく吠えない犬でも、旅先では敏感になり吠える機会が多くなるという場合もあります。

このようなケースでは、宿泊先に着く前に近隣を散歩させ、その土地の匂い、音に慣らしながら、いつもより長めに散歩をして、犬の体力を発散させておくのもおすすめの方法です。

 

〇5-4 オスワリ、マテ、おいで

この3つのしつけについては旅行だけではなく、犬と生活していく上で欠かせない基本的なしつけ3点セットと言えます。

うちの子はこれできるよ」という方でも、犬は環境に左右されるものですから、慣れない環境下では、普段はできていることでも急にできなくなるといったことがよくあります。

そうすると、飼い主の多くは「もう!いつもできるのに、どうして!ちゃんとしなさい!」と、つい叱り気味になってしまうものです。

 

でも、ここで声を荒げたり、無理に指示をきかせることは逆効果という場合もあります。

せっかくの旅行先で叱りっぱなしというのでは、思い出どころか、旅行自体が嫌な印象として犬の心に刻まれてしまいます。

 

そうならないためには、普段からできているオスワリ、マテ、おいでの基本3点セットを、様々なシチュエーションで行い、経験値を積み重ねていくのが効果的です。

例えば、家の中でできたら、次は玄関先で。それができたら次はいつもの公園で。次は初めて通る道で。ドッグカフェで。と、だんだんと犬のテリトリー外で行います。

 

ポイントは、できなくても決して叱らないことです。いつもできていることができないのは、環境に慣れないためですから、そんなときは一度気分を切り替え、慣れない場所の匂いをかがせたり、周辺を満足するまで散歩をしてみましょう。

匂いをかがせ、犬の脳で情報整理が済んでから再トライしてみると、意外とすんなりできてしまうものです。ぜひ、やってみてください。

 

 

■6. 旅行に便利な持ち物チェックリスト

犬を連れての旅行に欠かせない持ち物と、あると便利なグッズがこちらです。リストにしましたので、今後の旅行に備え、ご準備してみてはいかがでしょうか。

 

・狂犬病、伝染病のワクチン予防接種証明書(鑑札)

コピーでも良い場所と、原本の提示を求められる場所がありますから、念のため原本を持っていく方がベターです

・食べなれた、いつものドッグフード

一回分ずつの小分けにして持っていくと便利です。

・食べなれた、おやつ

すぐに取り出せるよう、手持ちのポーチやバッグに入れておくと良いですね。

・お散歩セット

肩掛けバッグや、ウエストポーチのようなタイプだと、両手が使えて便利です。

・使い慣れたリード、首輪(ハーネス)

・予備のリード

万が一切れてしまったときのために、簡易的な予備のリードを一本入れておきます。

 

水分補給、排泄後のマナーとして流すために使います。ワンプッシュで出し入れができる製品がおすすめです。

 

・自分の匂いがついたタオルや毛布

不慣れな場所でもこれがあると安心できます。車での移動なら、普段使っているベッドを持っていくのも手です。

・マナー用紙おむつ

マナーパンツの着用が一般的になってきました。おしっこをあちこちにかけてしまうようなマーキング対策として、普段から慣れさせておくとストレスになりません。

 

・足、体を拭くためのタオル

水場や泥、枯草、朝露、突然の雨などに備え、汚れてもいいタオルを入れておくと何かと便利です。

・トイレシーツ

宿泊先で用意しているところもありますが、念のため多めに持って行った方が良いでしょう。

・ブラシ

簡易的なものでもいいですので、一本用意があると、砂やほこり、草の実やダニを払うために使えます。

 

・レインコート

雨や雪、防風に備えて持っていくと良いでしょう。

 

・UVガードの洋服

夏場の紫外線から皮膚を守るためです。

・掃除用粘着テープ

 

・軽い携帯用フードボウル

折り畳みのできる携帯用があれば、持ち運びもラクラクです。

 

・ウェットティッシュ

ノンアルコールで、香料が付いていないタイプのものは、顔や口周りにも使えて便利です。

 

他に、使い慣れた抱っこ紐、スリング、知育おもちゃ、ボール、ぬいぐるみなどがあると何かと使えます。また、いつものトイレでないと室内で排泄ができない、と言う子もいますから、その場合にはいつも使い慣れているトイレも持って行った方がいいですね。

 

■7.移動手段

電車で行くか、自家用車にするかという選択は、荷物の量にも左右されます。

難易度が高めなのは新幹線かもしれません。新幹線を利用する場合は、空いている車両を選ぶ、吠えたらデッキに出やすい座席を選ぶなどの配慮が必要です、他には、ペット利用もOKのフェリーというのがあります。

個室を利用してリッチな船旅ができるなんて、憧れてしまいますね。犬連れでない他のお客さんの気持ちも考え、マナーを守って楽しみましょう。

飛行機の利用は、念入りな下調べがマストとなります。

最近では犬も人と同じ一般座席に乗れるという特別な便ができましたが、ごくわずかな路線に限られています。通常は、人の座席ではなく、基本的には貨物扱いとなります。

パグ、フレンチブルドッグ等の短頭種をはじめとした特定犬種のフライトは規制がありますので、各航空会社に詳細を問い合わせしてから計画する必要があります。

 

■まとめ

初めて愛犬と旅行をする際には、いろいろな心配が付きものです。荷物も必然的に多くなりますね。

しかし、しっかり準備をすることで、突然のアクシデントにも備えることができます。

まさに「備えあれば憂いない」といったところですね。旅行の計画をし、行く先や休憩場所の情報を集めることと同時に、しつけを見直してブラッシュアップしていきましょう。

 

旅行は、人と犬の絆を強くしてくれる機会でもあります。

知らなかった一面を見ることができたり、あらためて愛犬の可愛さ、賢さ、マナーの良さを感じられることと思います。

旅に慣れてくれば持ち物も少なくなり、ふるまい方やマナーも自然と体に染みついてきます。

たくさんの命の中から巡り合った愛犬と、心の結びつきを感じながら、ぜひ旅行をエンジョイしてください。

 

最後にもう一つだけアドバイスを申し上げます。旅行先で大事なのは、飼い主が落ち着くことです。

そわそわしたり、不安で胸がいっぱい、といったマインドでは、犬にもそれが知らずしらずのうちに伝わってしまうものです。

これは、情動伝染と呼ばれる相互作用ですので、つまり反対に考えると、飼い主が落ち着いてリラックスできれば、それは犬にも伝わり、両方がハッピーな気持ちで旅を楽しむことができる、と言うわけですね。あなたとあなたの愛犬の旅が、良い思い出になるように応援しています。

 

2022.4.30 岩井ゆかり