3〜8月がピーク?!猫の発情期について!
人間にはありませんが、動物には発情期と呼ばれる繁殖行動を取る時期があります。動物種により違いはありますが、今回は家庭での飼育頭数が年々増加している一方で、外には野良の子たちもまだまだたくさんいるので、発情期の行動が問題になりやすい、猫の発情期について紹介します。
発情のしくみ、問題行動、対処法はあるのかみていきましょう。
メスの発情
まずはメスの猫の発情についてみてみましょう。なんとなく大きな声で鳴いたりして、騒がしくて迷惑なことは知っているけれど、詳しくは知らない方も多いと思います。
猫飼いさんでも、発情前に避妊手術を行ったので、発情期の猫を見たことがない方もいらっしゃると思います。
どのような条件で発情期が来るのか、いつ頃どのくらいの期間続くのか、どのような行動がみられるのか、紹介していきますね。
発情のしくみ・時期
発情と聞くと、人間でいう月経にあたる現象を考える方も多いかと思いますが、猫は交尾するとほぼ100%妊娠する交尾排卵動物なので、定期的に排卵はしません。
もし、陰部から出血がある場合は病気の可能性が高いので、必ず動物病院を受診してください。
また、猫は長日繁殖動物(季節繁殖動物)と呼ばれる動物で、1日の日照時間が14時間以上になってくると発情がくると言われています。
これは猫の妊娠期間がおよそ2ヶ月ほどであるので、日照時間が長くなってきた春の始め頃に妊娠すれば、暖かくて食べ物の多い時期に子どもを育てることができるようになっていると言われています。
一般的には年に2回ほど、3〜5月と6〜8月頃に発情が来ることが多いようです。
これとは対称に短日繁殖動物と呼ばれる動物もおり、これにはヤギやヒツジなどがいます。
こちらのグループは、妊娠期間が約半年間と長めなので、日が短くなってくる秋頃に妊娠すれば、暖かい春に出産できるというわけです。
どの動物も子どもをより良い環境で育てられるようになっているわけですね。
発情期は日照時間によるとご紹介しましたが、実は電気や照明器具の光も影響すると言われています。
12時間以上電気を点けっぱなしの環境で生活している猫は年中発情してしまう恐れがあります。
あまりそのような家庭はないかと思いますが、お店をしていて夜遅くまで電気が点いている環境などの場合は、別の部屋は電気を消すようにし、猫はそちらの部屋に行けるようにしておくなど対策をしてあげてくださいね。
生後5〜6ヶ月を過ぎたあたりに初回発情がくることが多いですが、個体差が大きいので、生後4ヶ月と早い時期や遅めの1歳を過ぎてからという場合もあります。
一般的にノルウェージャンフォレストキャットやペルシャなどの長毛種は、短毛種に比べて初回発情がくるのが遅いと言われています。
どんな行動がみられる?
発情は4つの周期に分かれており、時期により少し行動に変化もみられます。それぞれどういった時期なのか1つずつみていきましょう。
発情前期
発情期が来る前の時期です。まだオス猫のことは受け入れません。一般的に1〜5日ほど続きます。
動きが活発になりますが、その一方で食欲は低下します。おしっこの回数が増えたり、飼い主さんに擦り寄ってきたり甘えた行動がみられることがよくあります。このとき、撫でてあげたりしてかまうと発情行動を増長させてしまうとされていますので、可愛いので撫で回してあげたい気持ちは分かりますが、できるだけかまわないようにしましょう。
発情期
交尾の準備ができた時期です。4〜10日ほど続きます。
発情前期から引き続き、動きは活発ですが、食欲は低下したままです。
赤ちゃんの泣き声のような大きな声で鳴いたり、背中を床につけてくねくねしたり、お尻を高く持ち上げるなどの行動がみられます。
また、オス猫のようにスプレー状におしっこを飛ばしたり、おしっこを失敗したりすることもあります。
この時期にオスと交尾を行います。
前述の通り、猫は交尾するとほぼ100%妊娠するので、妊娠してほしくない場合は何としてもオス猫との接触を避けさせましょう。猫の交尾は時間自体は数秒なので、少し目を離した隙に…ということも大いにありえます。
オス猫は交尾の際、メスが逃げないように首筋に噛みつくことがあります。
もしメス猫の首筋に噛まれた跡があれば、交尾を行った後である可能性が高いです。多頭飼いでおうちに未避妊、未去勢の子がいる場合は気を付けてみてあげてくださいね。
発情後期
交尾後、排卵し、卵胞が退化する時期です。通常1日ほどで終わります。
この時期になると、オス猫のことは受け入れなくなります。
発情休止期
次の発情までの休憩の時期です。5〜16日ほど続きます。
オス猫には無関心になります。妊娠しなかった場合は、5〜16日後に再び発情します。
オスの発情
それでは続いて、オス猫の発情についてみてみましょう。春先などに町中で野良猫がケンカをしているのを見かけることがあるかと思いますが、発情期に関係があるのか、メス猫と同じく、どのようにして起こり、どのような行動がみられるのか、紹介していきます。
発情のしくみ
実は、オス猫には発情期というものはありません。
オス猫自体がなにか身体に変化があったり、メスのように日照時間によって変わることはなく、オスは発情しているメスの鳴き声やフェロモンに反応して発情するようになっています。
逆に言えば、近くに発情したメス猫の気配が一切なければオス猫は発情しないということですね。気配を感じさせないというのは、実際にはなかなか難しいことですが…。
外に出さないことはもちろんのこと、外の様子が見えないように窓際にくつろぎスペースは置かないようにする、防音カーテンを使用するなど、色々なことを試してみたとしても、完全に他の猫の気配を消すことはできないですよね。
一般的にオス猫の性成熟が始まり、精巣・精子が作られ、交尾が出来るようになるのは9ヶ月頃以降と言われています。
もちろんオス猫でも個体差はあるので、多少前後することはありますが、まだ子猫だからと油断していると、あっという間に大きくなって、どんどん繁殖してしまう恐れがあるので気を付けてくださいね。
どんな行動がみられる?
大きな声で鳴く、飼い猫の場合はメスのところへ行きたくて脱走する、スプレー尿を飛ばす、攻撃的になるなどの行動がみられます。
大きな声で鳴かれると近所迷惑になり、マーキングのために匂いの強い尿を家の中のあらゆるところにまき散らされると、日常生活にも支障をきたしますよね。
また、少しドアを開けた隙間から脱走してしまい、野良猫とケンカしてケガをして帰ってくることも出てくるかもしれません。
室内で飼っている子が外で野良猫に噛まれたりすると、病気を移される可能性もあります。猫同士だけではなく、人間に対しても攻撃的になってしまう子もいるので、いつもおとなしいからと油断もできません。
また、家から脱走してしまうと交通事故にあう可能性もありますし、迷子になって帰ってこられなくなってしまうかもしれません。
脱走しないようにどれだけ気を付けても、来客があったときの一瞬の隙や、少し開いた隙間から器用に自分でドアを開けたり、網戸を破ったりして、猫は犬に比べるととても器用なので、どうにかして脱走しようと試みてきます。
様々な理由から今では完全室内飼いが推奨されていますが、発情期に家から出られないことはストレスに繋がりますよね。
だからと言って、自由に外に出してあげるわけにもいかないので、どうにかして外に出ようとする猫と、何としてでも阻止しようとする飼い主さんの攻防が続き、どちらもストレスで疲れてしまいます。
本能的なことなので仕方がないとはいえ、それが毎年2回ずっと続くと考えると、飼い主さんも先が思いやられると思います。
対処法
根本的な解決方法は、それぞれ避妊・去勢手術を行うことしかありません。繁殖させる予定がないのであれば、早めに手術を受けることをおすすめします。
問題行動が顕著になってから手術を考えても、行動が癖づいてしまっており、改善しない可能性が高いので、初回の発情行動が見られる前に手術を受けることができるように、準備しておきましょう。
手術を受けることは全身麻酔が必要になるなどリスクもありますが、メリットも多くあります。
先ほどご紹介したような発情期に伴う問題行動を抑制するだけでなく、他の病気の予防にもなり、望まない妊娠も避けられます。猫は1度の出産で1〜8頭の子猫を産みます。1頭だけということはあまりなく、3〜4頭ぐらい産まれることが多いです。
避妊・去勢手術を行わずにずっと放置しているとあっという間に数は増え、簡単に多頭飼育崩壊になりえます。望まれない出産をしてしまう前に手術を受けて、適正に飼育してあげることの方が動物の幸福にも繋がります。
発情期の行動は本能的なものなので、叱ったりしつけようとしたりしても収まるものではありません。さらに発情期に相手のところに行くことができず、交尾ができないことは猫にとって結構なストレスです。
毎回発情期の度にストレスを溜めることになるのも可哀想ですし、問題行動が続くと飼い主さんにとってもストレスですよね。
お互いのストレスを減らすためにも避妊・去勢手術を受けることは有効な手段です。
病気の予防面では、メス猫の避妊手術は効果がとても期待されています。
メス猫に多く、発症すると悪性の確率が高い※乳腺腫瘍は、初回発情前に避妊手術を受けることにより、発症率をぐっと抑えることができます。
また、避妊手術では卵巣と子宮を摘出することが多いので(動物病院により卵巣だけ摘出するところもあるので、かかりつけの病院はどちらなのか、事前にきちんと確認するようにしてくださいね)、高齢になると起こりやすい※子宮蓄膿症は発症すること自体がなくなります。
避妊・去勢手術は、難しい手術ではありませんが、100%安全なものでもありません。
健康なのに麻酔をかけて手術を行うことに抵抗がある方もいるでしょうし、手術を行うと太りやすくなったり、絶対に問題行動がなくなるとも限らず、手術をためらう気持ちも分かります。
動物病院でしっかりとメリットとデメリットを説明してもらい、家族全員が納得してから手術を行えるようにしてくださいね。
※乳腺腫瘍…病気で亡くなってしまう猫の死因1位が悪性腫瘍であり、悪性腫瘍の中で1番多いのが乳腺腫瘍と言われています。猫の乳腺腫瘍はおよそ8割が悪性であると言われており、悪性で発見が遅れた場合、転移しやすく予後不良なことが多いです。
猫には左右4対、計8つの乳腺があり、その全てに乳腺腫瘍ができる可能性があり、しこりが1つ見つかるとすべての乳腺を摘出することもあります。
※子宮蓄膿症…なんらかの原因により、子宮に膿がたまり、どんどん大きくなる病気です。高齢の未避妊の犬に多いですが、猫でも稀にみられます。
外科的に卵巣、子宮を取り除くしか方法はなく、放っておくと体内で子宮が破裂し、死に至ることもあります。
まとめ
猫の発情期は、日照時間が長くなってきた頃にメスに起こり、その発情したメスの匂いや鳴き声にオスは反応します。
独特な大きな鳴き声やオス同士のケンカの声など、ご近所トラブルになることも多く、飼い主さんを悩ませるタネになります。
交尾してしまうと、ほぼ100%妊娠してしまうので、妊娠を希望していない場合は、なにがなんでもオスとメスの接触は避けなければならなく、脱走を阻止するのもひと苦労です。
しかし一時的な対処法として、著しく効果の期待できるものはなく、避妊・去勢手術を行うしかありません。また手術も時間が経って何度も発情期を経験してからでは、問題行動の抑制に対する効果はあまり期待できないので、行うとすれば早めの、発情がくる前がベストだとされています。
子猫を飼い始めて、まだそういった発情期に伴う行動を目にしていない段階から、避妊・去勢手術を考えることはなかなか難しいかもしれませんが、早い段階でないと、せっかく手術を行うと決心しても、問題行動の抑制も病気の予防も効果がみられなくなってしまいます。
猫を飼うと決めたのであれば、困った状況になってからではなく、事前に予防できることはしてあげられるように準備しておいてあげてくださいね。
猫と人間、どちらも快適に暮らせるような環境を作ってあけてください。